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パネリスト紹介

座長
柿澤 宏昭

北海道大学大学院 農学研究院 教授
(違法伐採総合対策推進協議会 証明方法検討部会小委員長)

【プロフィール】

1984年北海道大学大学院農学研究科修士課程修了、北海道大学農学部教授、助教授を経て同大学農学研究院教授。専門は森林政策で、持続可能な森林管理を支える仕組みづくり、ロシアの森林管理と政策などを研究している。主な著書として、『エコシステムマネジメント、ロシア−森林大国の内実』などがある。

【パネルディスカッションに対する期待】

違法伐採総合対策推進事業に部会の委員としてかかわらせていただいてきましたが、認定事業体の数が急速に増大するなど、事業の成果が着実にあがっていることを感じます。一方、まだ取り組みを始めたばかりであるため、改善を進めなければならない点があることもわかってきました。また、違法伐採対策を進めるためには、供給者側だけではなく、需要者の方々との連携・協力が重要であることも認識されてきました。

今回のシンポジウムでは、先進的な取り組みをされている供給側・需要者双方の方々がどのように取り組みを進めているのかを学び、その経験を参加者の皆さんと共有できればと思います。供給者の方からは、合法木材の供給体制をよりよいものにしていくためにどのような取組が必要なのか、需要者の方々からは、合法木材の需要の広がりをつくっていくためには何が必要なのかについて学ぶことができればと考えています。

違法伐採対策は、単にサミットで公約したからやるというものではなく、持続可能な森林管理、持続可能な社会づくりという人類共通の大きな目標への一歩と位置付けられます。このシンポジウムもその一歩に貢献できればと希望しています。

鈴木 不二男

丸善木材株式会社 代表取締役
(北海道釧路町・林野庁長官感謝状受賞者)

【プロフィール】

昭和15年北海道釧路管内浜中町生まれ、東京経済大学経済学部卒、丸善木材株式会社代表取締役社長。
北海道森づくり審議委員、東北海道木材協会長、北海道木材産業協同組合連合会(道木連)副会長など歴任。

【コメント】

合法木材の取組み等について

違法伐採対策として、業界団体が認定する合法木材供給事業者となることの必要性を強く認識し、当初の北海道木材産業協同組合連合会(道木連)の認定事業体となって以来、合法木材への取り組みを強化し、原木の仕入れに関するチェック体制を整備してきた。

当社と取引する素材生産業者ならびに森林組合も全て合法木材供給認定業者でありその責務を遂行している。生産地の明示を徹底し供給側、受入れ側双方で正当なものであることを検証、当社における担当者は樹種・材種・数量等を検品し納品伝票と一致するか常に確認している。

当社は米材・カナダ材の原木も商社を通じて仕入れているが、これらに関しては原木が産出国の法律に則して伐採され輸出された事が証明されている書類の提出を取り決めている。

昨今「食の安心・安全」という言葉が流行語のごとく使われているが、木材においても消費者に対して安全安心をPRしてゆく事が森林林業・木材産業にとって大事なことであり、今世紀最大の脅威とされる「気候変動=地球温暖化」を抑制する為の森林林業の役割について、合法木材を通じて広く国民に周知してゆくことが大切であると考えている。

原料から製品にした製材は需要者側に「安心・安全な木材」であることをPRしていかなければならない。その為には出荷する工場が「合法木材供給業者認定」の登録業者であることが必須条件になると考えている。

北海道においては平成16年から北海道庁及び道木連が先頭になって道産材利用促進対策事業を推進、その中で道民に対し地域材を広く啓蒙してきた。

自治体に対しては森林の公益的な機能と林業・木材産業の担う役割に関する理解を深めてもらう為に釧路、根室地方の森林、林業、木材産業の活性化を促進する為の組織「林活議連」を作り、各市町村議員に超党派での勉強会や現地視察を行うなかで合法木材の意義などの理解を求めている。

公共事業等においての合法木材普及に関しては、工事発注時の承認願い完了時の出荷証明等の書類に合法木材供給業者認定の登録書写しを添付ことにより、発注側・受注側双方の意識が徐々に高まりつつある。

今後とも、プレカット工場・工務店・ハウスメーカー・エンドユーザーに対してこれらのことをPRしてゆくことが木材業界として必要不可欠であると考えている。

竹内 福治

北三株式会社 取締役会長
(東京都江東区・林野庁長官感謝状受賞者)

【プロフィール】

昭和28年竃k三商会入社、平成10年 北三株式会社代表取締役社長、16年 同取締役会長(現職)。

全国ツキ板連合会 副会長、日本内装工業会 副会長などを歴任。

現在、全国天然木化粧合単板工業協同組合連合会会長。

【コメント】
T.合法木材供給の今までの取組

1.平成18年4月、改正グリーン購入法の施行に伴い違法伐採総合対策推進事業が開始となり、弊社としては、この問題は「地球規模での環境保全」や「持続可能な森林経営の推進」更には「木材への信頼性の低下」等に係わる重要な課題を含んでいるとの認識に立って、率先して取り組んで参り、平成18年5月、ツキ板業界の認定団体である全天連から合法木材供給事業者としての認定を取得した。

2.社内への周知に当たっては、「業務マニュアル」を作成、全従業員に配付、各事業所ごとに説明会を数回にわたり開催し、徹底を図った。

3.また弊社が取り扱う全ての木材製品について、合法性の情報をデータベース化するとともに、弊社ホームページやカタログには合法木材への取組に関する説明を掲載、更には合法木材ナビの合法木材製品事例紹介に掲載する等して、合法木材製品の普及に努めている。

4.弊社が利用する木材の8割は輸入材であり、各国の国情、法体系が異なるため、当初は、グリーン購入法や林野庁作成のガイドライン、違法伐採対策の取組方策について理解してもらえなかったが、根気強く取り組み、一つ一つ解決しながら進めてきたところである。

5.弊社の取組はまだまだ不十分で、合法性等の証明等について精度を高める努力をしていく考えであり、合法木材供給への取組姿勢は、企業の信頼性の確保・向上と密接に関係すると共に、ひいては取引の拡大にもつながっていくとの確信をもって、今回の受賞を契機として、今後とも精一杯努力して参る考えである。

U.今後の取組と課題

1.合法木材の供給は、今は政府調達あるいは一部大手メーカーが主体となっており、今後は広く市場を拡大していくかが大きな課題であると考えており、政府と業界が一体となって合法木材の供給体制の整備や普及活動を更に継続していく必要があると痛感している。

2.平成18年度から今日まで合法木材の供給について取り組んできたが、未だ最終需要者である一般消費者に広く浸透していないように思われる。違法伐採の情報のみが報道され、一般消費者の木材離れも起きかねないと危惧しており、今後は業界の枠に止まらず、木材を広く利用する社会作りの一翼を担って行きたい。

山口 忠義

社団法人群馬県木材組合連合会 専務理事
(違法伐採総合対策推進協議会会長表彰状受賞者)

【プロフィール】

昭和18年愛知県生、昭和41群馬県入庁。林務部林政課・県林業試験場・東部林業事務所長・県林務部森林計画室長など、平成16年3月 群馬県退職後、(社)群馬県木材組合連合会専務理事。

38年間群馬県に奉職し、行政、試験研究に携わってきた。このうち、17年間試験場で樹病などの森林保護を担当し、特に、松くい虫被害が本県で発生して以来、行政と一体となって、被害対策および防除対策に取り組んできた。

【コメント】
(1) 業界団体認定に取り組んで

私どもの林業、木材産業では、長年の木材価格の低迷により極めて厳しい状況にあり、違法に伐採された安い木材の輸入が悪影響を与えていると考える。

平成18年2月、林野庁が「木材、木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン」を定め、これを受けて当連合会は、平成18年8月、「自主的行動規範」を制定するとともに、「事業者認定実施要領」を作成し、「合法木材供給事業者認定団体」としてスタートした。

事業者の認定には、全組合員に理解してもらうことを目標に、きめ細かな説明会が必要と考え、当会の会長をはじめ、行政機関の参加を得て県下7か所で開催したところ、関係者を含め250名以上の参加があり、第1回の審査会において組合員の5割を超す227事業者を認定した。なお、地元新聞がこれを掲載した。

説明会では、この制度の質問のほかに、当会に対する意見要望を多くの組合員から聞くことができた。また、この制度の必要性を感じて、新たな組合員として加入したほか、毎年、組合員が大幅に減少するが、その減少率が鈍化した。

(2) 利用者に支えられた合法木材・持続可能な木材の将来

この制度は3年目になるが、これまで、利用者に信頼される合法木材の供給体制づくりに重点を置き、合法木材の利用促進に取り組んできた。

この間、平成18、19年度、合法木材の証明状況を追跡調査したが、供給者側では、2年目にはほぼ証明されていたが、需要者側では、一部を除いて制度の認識がほとんどなく、当然、合法木材証明に対する要請もなかった。

また、当連合会では合法木材のPR並びに利用促進を図るため、公共工事を扱う県、市町村並びに業界団体に要請してきた。

しかしながら、この制度はスタートして日が浅く、一般に広く知られておらず、まだまだPR不足である。合法木材の普及には、はじめに、波及効果の大きい公共工事を扱っている国はじめ、県、市町村、業者などに繰り返し要請する必要がある。

さらに、新聞広告やテレビのマスコミをはじめ、各種イベントなどを通して国民に積極的に普及を図ることが重要である。

乾 和也

積水ハウス株式会社 環境推進部 部長
(合法木材等利用者・林野庁長官感謝状受賞者)

【プロフィール】

1951年兵庫県生まれ。同志社大学工学部卒業。75年積水ハウス入社。工場の公害防止チームに配属後、技術関連部所で「部材設計・標準化設計」等を経て、99年環境推進部発足と同時に配属。全社的な環境取組み企画や環境負荷軽減の推進を担当、環境取り組みのひとつとして持続可能な木材調達を推進。2007年4月より環境推進部長を務める。

【コメント】
(当社の取り組み)
  1.  当社では昨年4月に木材調達ガイドラインを発表し、合法木材の調達についても、その中で取組みを進めている。また、今年6月に住宅・建設業界で初めて(環境省が創設した)「エコ・ファーストの約束」を行ったが、持続可能な木材調達については生態系ネットワークの復活を積極的に推進するための1テーマとして位置付けている。
  2.  具体的な取組みは、WGで検討しているが、環境部門だけでなく、調達部門や開発部門、生産部門でメンバーを構成しているため、部所横断的な施策を検討することが可能である。
  3.  住宅産業はアセンブル産業で、多くのサプライヤーの協力が不可欠。木材調達レベルを高める上でも、サプライヤーとの対話が重要になってくる。主要木質建材調達先数十社に対しても、ガイドラインの説明会を実施し、取組みの背景までご理解いただくことを心掛けている。
  4.  サプライヤーに対して木材調達の実態調査を行っている。方針としてはできるだけ伐採地に近い情報を求めているが、以前より、調達木材に関する情報が出てきやすくなっている印象を受けている。
     情報が出てきやすくなってきた理由としては、木材業界の違法伐採に対する問題認識の高まりや業界団体認定という仕組みの導入などが考えられる。
(評価と期待)
  1.  以前より情報が出てきやすくなってきたとはいえ、確認手間や時間などはまだまだ改善の余地があると考えている。もっと正確な情報を迅速に入手できるようにする必要があるので、現在の仕組みを強化してもらいたい。
  2.  供給側の意識や体制が高まっている割には、一般生活者への違法伐採問題に関する情報の普及が遅れている。当社では生活者に対する意識啓発という視点で持続可能な木材調達に関する絵本を作成し、営業現場に配布している。
     最近、少しずつではあるが営業現場から木材調達に関する問合せや要望が増えてきている。環境取組みの一環として、木材調達に関する意識が高まってきていることの現われだと考えている。
     違法伐採防止に対する取組みスピードを上げるには、一般生活者の意識啓発は非常に効果的であると考えられる。業界横断的なわかりやすい情報発信が重要だと思う。
     上記に加えて、持続可能な木材調達に対する経済的なインセンティブも違法伐採防止には効果的だと思う。ただ、そのためには持続可能な木材調達を正確に迅速に確認できる仕組みが必要になる。

森田 一行

林野庁 海外森林資源情報分析官

【プロフィール】

昭和30年富山県生。昭和54林野庁入庁。JICA専門家として、ナイジェリア、ミャンマー、インドネシアで8年間技術協力に従事。

平成14年4月から林野庁木材貿易対策室に勤務し、WTO、FTA林産物貿易交渉、国際熱帯木材機関(ITTO)等を担当するとともに、インドネシアとの違法伐採対策行動計画、グリーン購入法、G8専門家報告書の作成等を通じて、違法伐採対策に取り組んできた。平成20年4月から現職。

【コメント】

合法性、持続可能性が証明された木材、木材製品を政府調達の対象とするグリーン購入法の改正が行われて2年半が過ぎ、幅広い関係者の協力の下で、国内の認定事業体が川上から川下まで7千を超えるなど、合法木材の供給体制の整備については、大きな前進があった。

日本に木材、木材製品を輸出している国についても、日本の取組が契機となって、インドネシア、マレーシアをはじめ、ロシアやガバナンスに問題がないとされている米国、カナダ等でも民間事業者を中心に積極的な取組が開始されており、この措置を導入した成果は着実に表れ始めている。

違法伐採木材、木材製品を市場から排除するためには、民間市場における合法木材が正しく評価され、選択されることが重要。そのためには、消費者がいつでもどこでも選択可能な合法木材の市場を早急に作りあげることが必要。政府調達制度は、このための政府の姿勢を示すメッセージであり、きっかけのひとつに過ぎない。

他の消費国においても、EUのFLEGT行動計画、米国のレイシー法改正など、政府調達、生産国への支援、原産地表示等の取組が進んでおり、生産国、消費国の連携も強化されつつある。

今後は、民間市場における合法木材の普及定着を一層促進するために、情報提供を含めて政府として必要なサービス、供給側、消費側双方にとってよりわかりやすいガイドライン、合法木材を利用することに対して効果的なインセンティブの在り方、証明の信頼性の向上等について、実際に取り組んできていただいている方々や消費者、環境NGOの方々など幅広い関係者の意見を聞きながら検討していきたい。この合法木材の取組を契機に、よりよい原料調達・供給体制を整え、透明性の高い調達と供給が実現できる企業が、環境に配慮した企業活動として、今後、国民に期待されるものと信じている。

荒谷 明日兒

社団法人林業経済研究所 所長
(違法伐採総合対策推進協議会 委員・合法木材等推進顕彰選考委員会 座長)

【プロフィール】

1971年東京教育大学大学院農学研究科過程終了。東京大学農学部助手、(財)日本木材総合情報センター情報主幹を経て、新潟大学農学部を経て2008年7月より現職。総合情報センター時代は特に東南アジアの木材産業の調査に従事。専門は木材貿易、木材流津。主な著書として『インドネシア合板産業』『世界の木材貿易構造』。